私は幼児教室で働く事10年以上になりますが…よく聞かれるのが、「ひらがなの学習はやっておいた方がいいの?」という質問。
教室に対して「ひらがなをやってほしい」という要望を伺う事もありますが、正直なところ、興味を持っていない幼児に対して、読み書きに時間を割くのは勿体ないです。
理想は、子供自身の興味を親が後押しする事で、自然と読み書きが出来るようになる事。その為には、土壌(環境)作りと、芽が出るような水遣りが必要です。
この記事では「ひらがなが自然と読めるようになる」アプローチ方法をお伝えします。
3歳4歳ひらがなが読めない時の対処法
ひらがなを読めるようになる平均年齢は、4~5歳です。文部科学省の調査では、子供の約80~90%が、4歳~5歳頃にひらがなを読めるようになる事が分かっています。
3歳~4歳で、ひらがなを読む事ができなくても、問題ありません。知能検査でも、小学校受験でも、基本的に幼児に読む力は問われません。(ごく一部の学校を除く。)
しかし、「視る力」と「語彙」は注意しておきたいポイントです。そして何よりも「興味」の有無が大きいです。興味さえあれば勝手に習得する可能性も高いです。
ひらがなの読みに繋がる土台があるんだね。
興味が持てるよう働きかける
ひらがなへの興味が無い子に、覚えるための訓練をする事や、握力の弱いうちから鉛筆を持たせて練習をさせる事は、文字嫌い・学習嫌いを招きかねません。
しかし…見た事の無いものに、興味の持ちようはありません。
3~4歳で読める必要は無いですが、まずは興味を持ちやすい環境を整えてあげましょう。
最も大事にしたいのは、興味が持てる・楽しく触れられる動機付けです。興味を持った子は、放っておいても自分から「読みたい」「書きたい」という気持ちが芽生えます。
視る力(視空間認知)を育てる
ここでの「視る力」とは視力の事では無く、眼でとらえた情報を脳へ送り認識する「視空間認知」となります。
視空間認知は、視覚情報を処理し全体的なイメージを掴む力で、文字や形の把握に使われます。
この力が備わっていないと、ひらがなを読むのは難しいでしょう。逆に、この力が十分に育っていれば、興味が出た途端に読めるようになる可能性があります。
語彙を増やす
1文字に1つの読みが対応している事が分かっても、そこから読む力に繋げるためには、語彙も必要になります。
例えば、「し」「ん」「か」「ん」「せ」「ん」と1文字ずつ認識できても、その文字が何を示しているのかが理解できなければ、文字を理解したとは言い難いですよね。
言葉のまとまりとしての「しんかんせん」という音と、高速でレール上を走る乗り物のイメージが結びついてはじめて、文字列の意味が理解できる事になります。
興味を持ってもらう方法
興味がもてるような環境作りや、対話、おもちゃ選びをしてみましょう。
- 持ち物に名前を大きくつける
- 家の物に名前をつける
- 日常生活で親が読んで見せる
- ひらがなポスターを貼る
- ひらがなに触れられるおもちゃを与える
- 絵本で触れる
- 動画コンテンツを使う
- 教材を使う
子供の持ち物に名前をつける
娘が一番最初に文字への興味を示したのは、外遊び用のボールに大きく娘の名前を付けた事がきっかけでした。マジックでこんなイメージで書くと喜びました。
ひらがなに親しめる環境を作る
家にある物に、名前ステッカーを貼るのも効果的でした。語彙も増えますね。
愛用していたのは、貼って剥がせるこちらのステッカー。
最近では100円ショップでもポスターが売られていますね。注意したいのはフォント。
例えば「さ」の2画目と3画目はしっかり離れているか等、確認が必要です。
興味の無い段階では、イラストが入っている方が良いです。
おもちゃでひらがなに親しむ
キャラクターの力を借りるのも手!
娘は保育園に迎えに行くと必ずこの玩具で遊んでいました。
これはよく遊ぶ!と評判のタッチペンの音の鳴る図鑑。ひらがなページは五十音の音が鳴るよ。
娘が3歳の誕生日プレゼントに頂いた音図鑑。自分の名前が登録できるのが嬉しいようで、ひらがな読みがかなり進みました。
一番遊びこんだのは「あいうえお積み木」。我が家は、西松屋の「お風呂でぴったんあいうえお!」にハマりました。色んな遊びが出来て、ひらがなを覚えるのにも役立ちました。
こちらの磁石あいうえお盤は、裏側が数字盤になっているのが嬉しい。
私が一番欲しかったひらがなおもちゃは、こどもチャレンジのひらがなパソコン。アンパンマンのタブレットと一見似ていますが、機能性・拡張性が格段に良いです。
※現在は「ひらがな・かずパソコン」としてさらにパワーアップしています。
映像コンテンツを使う
映像には賛否両論ありますが、テレビを見せているご家庭であれば、与えてみるのも一つ。
図書館ではDVDを借りる事もできます。こちらの映像は古いですが、楽しんで見ていました。
知育雑誌も動機付けの一つになります。春の増刊号では付録でポスターやDVDが付いてきますよ。通販でバックナンバーの購入も可能です。
視る力を育てる遊び
物の形を捉えたり、違いを見分けたりと、視空間認知に働きかける遊びに誘ってみてください。楽しく取り組めるおもちゃ、ワークを導入するのも良いですね。
- はさみで形の切り抜き
- お手本を再現するパズル
- ジオボード
- 迷路
- 同図形発見(同じもの探し)
- 点図形
- 回転図形
書店であらゆるハサミ切りワークを見比べて、よく出来ていると感じる一冊。教室でもおすすめされています。
簡単すぎず難しすぎず、年少さんからちょうど良いタングラム。
療育施設でパターンボードに取り組む事で、視空間認知が高まり、絵や文字を描くのが上手くなった事例もあります。
迷路。最初は学研のワークがおすすめ。迷路の中で使えるシールもあり、楽しく取組めます。
小受定番、こぐま会のプリント。年少頃から出来ますが、ある程度の握力や運筆力が付いていないと楽しくないので、迷路などで様子を見てから導入してみて下さいね。
年少頃から出来る同図形発見も行います。ゲーム感覚で楽しく出来るのでおすすめ。
「学研のちえ」ワークは、同図形発見や、点図形、形、迷路なども、含まれています。かわいくてポップなため、とっつきやすいです。
3歳4歳ひらがなを読めない子へのおすすめ教材
お子様の様子に合わせて、自分でおもちゃやワークを選びたい方もいれば、まるっとコーディネートされた教材や通信教育を使いたい方もいらっしゃるかもしれません。
通信教育を使うと、調べて一々購入して…の手間が省けるよ!
こどもちゃれんじ
様々な教材に触れて来た中で、興味・動機付けに強いと感じたのは「こどもちゃれんじ ほっぷ」。
私は、こどもちゃれんじには入会しない予定でいましたが、当初の「ひらがなパソコン」があまりにも優秀で申し込んでしまいました。
キャラクターの魅力もありますが、映像と連動している事も相まって、興味・動機付けのパワーは本当に強いです。
さらに毎月追加コンテンツが届き、ゆくゆくは読み上げ機能付きで「かるた」まで出来て便利。飽きる事なく継続して遊べるので、勝手に読めるようになりました。
キッズワークには迷路や図形問題など、視る力の取組みも含まれています。
公式サイトで詳細を見る⇒こどもちゃれんじHPへ幼児ポピー
おもちゃは増やしたくないけど、興味を持つきっかけを作りたい方、視る力を育てるワークに取り組みたい方は、ポピー(きいどり)もおすすめ。
形を切る教材や迷路で視空間認知を育てつつ、ひらがなにも親しめる、やさしい教材は食いつきが良かったです。無理なく力が伸ばせそう。月額1500円なので始めやすいのも魅力。
一か月お試し教材は無料で貰えるよ!
公式サイトで詳細を見る⇒幼児ポピー公式HP
Z会幼児コース
小学校入学までに必要な力を身に付ける、Z会の幼児コース。年少の教材には、同じもの探しのような「視る力」を育てる問題が含まれています。
ひらがなも「同じもの探し」として登場します。読めなくても良いので、見る力を付けるところからのスタートには好感です。
この写真は資料請求すると無料で貰えるお試し教材。好きな子はゲーム感覚で進める事ができるので試してみてね。
公式サイトで詳細を見る⇒Z会幼児コース年少HP
5歳に向けて意識すると良いこと
4歳半ごろから、音韻意識が発達し始めます。
音韻意識とは、言葉を構成する音を認識する力です。例えば「りんご」なら、「り・ん・ご」と、3つの音で出来ていることが、頭でイメージできるかどうかです。
この意識を育てる取組は…
- グリコ(ジャンケンで勝った人が文字の数だけ進む遊び)
- 始めの音はなに?
- 終わりの音はなに?
- しりとり
- 何文字でできているかを考える
などです。
小学校受験の定番問題に、「この絵は、いくつの音で出来ていますか?音の数だけ〇を付けなさい」「これらの頭の音を繋いで出来るものは何?」というものがあります。
これは音韻の発達状況を確認している問題だと捉える事が出来ます。
4歳以降は、グリコやしりとりなど、楽しい遊びを通して音韻意識を育ててあげて下さいね。
まとめ
私も親なので、「読めるようになるかな?」と不安になる気持ちはよく分かります。
でも、焦らないでください。保育園・幼稚園の段階では、「ひらがな」の読み書きに時間を割くのは正直勿体ないです。
ひらがなを指導する園と、指導しない園の、読み習得率は両方とも93%という調査結果もあります。
ひらがなよりもっと大事なことに時間を使おう!
以上の事から、3~4歳の段階で気を付けたいことは、親が先走って嫌いにさせないこと。そして…
- 興味が出るように働きかける
- 視空間認知を上げる
- 語彙を増やす
- 4歳頃からは音韻意識を育てる
この4点を意識した対話や遊びを行ってみて下さい。視空間認知や語彙は「ひらがな」以外の、図形センスや表現力にも繋がります。
「ひらがな」にこだわりすぎず、発達に合った遊びを楽しみましょう。