幼稚園受験は「どのようにお育てになられているご家庭か」を問われる試験です。お子様の知能面・自立面・社会性・協調性・運動能力の他、ご両親の子供に対する教育姿勢(声の掛け方・接し方まで)チェックされます。
短期間で対策できるものでは無い為、ご家庭で日々子供としっかり向き合う事が重要です。今回は具体的な方法について、掘り下げたいと思います。
合格の為の単なる対策では無く、人生の基盤作りになる内容なので、受験をするか否かに関わらず大切にしたい事ばかりです。
小学校受験を見据えた2・3歳の幼児教育としても役に立つ内容だよ。
入試で問われる具体的な内容はこちら⇒幼稚園受験の試験内容とは?対策と必要な準備(2021年度入園試験体験記)

家庭で行える幼稚園受験対策
幼稚園受験対応の幼児教室に通っていても、保育内容の充実した保育園に通園していても、一番大切なのは家庭の教育力です。
ただ、「家庭教育」と一言で表しても漠然としていますよね。
そこで、この記事では私共の幼児教室でも大事にしている、具体的な8つの項目を挙げました。(さらに重要な「声の掛け方」についてはまた別途記事にまとめたいと思います。)
- 教育方針を決める
- 生活習慣と躾(自立心)
- 運動遊びと体力作り
- 知育
- 社会性の向上
- 手指の機能向上を促す遊び
- 五感への刺激
- 環境整備
教育方針を決める
家庭はすべての教育の出発点。我が子にどのような人に育って欲しいのか、その為にどのように教育するのか、方針を話し合っておくと、夫婦の足並みを揃える事が出来ます。
- 褒める事・叱る事に一貫性を持たせる事ができる
- 家族の時間をどのように過ごすか明確になる
- 自由遊びや対話の質が向上する
- 予想外の出来事にも柔軟に対応できる
- 幼稚園・学校選びの指針になる
パパに任せて、ママがお出掛けしていたら…テレビを何時間も見せっぱなしだった…という話をたびたび聞きます。
夫婦間で考えを統一すると、「時間を決めて見せよう」「我慢させよう」「質の良い遊びが出来る工夫をしよう」「外へ連れ出そう」と行動も変化します。そういった行動は積み重ねられていきます。
教育方針に根差した行動は、面接で具体的なエピソードを尋ねられた時や、想定外の質問を受けた時に生きてきます。(特にお父様)
家庭内で方針が統一されていると、子供も戸惑う事がないので、早めから擦り合わせておくに越した事はありません。成長の節目ごとに話し合えたら嬉しいですね。
生活習慣と躾(自立)
生活習慣の練習を行い、「自分の事は自分でやる習慣」を付ける事で、自立心を育む事が出来ます。また、生活でのお約束事を教える「躾」も行いたい年齢ですね。
自立が進むと、次はこれをしよう…と見通しを持って動く事も出来るようになります。それは状況判断力など、賢さのベースに繋がっていきます。
- 生活リズムの確立
- 挨拶や返事をする
- お着替え(オムツ替え)
- 靴の脱ぎ履き
- 靴を揃える
- お手伝い(机を拭く等)
- 玩具のお片付け
- お箸の練習
- トイレトレーニング
- 服を畳む
イヤイヤ期の「イヤ!」は「自分でやりたい!」という気持ちから来ている場合があります。
「どうせ失敗するし」「大人がやった方が早いし」と行動を制限せずに、子供一人で出来る工夫をして、この時期を上手く利用したいですね。
躾と聞くと「叱る」イメージがあるかもしれませんが「躾=教える」事です。機嫌良く、必要な事を伝えて行きましょう。

運動遊びと体力作り
身体と体力は全ての土台です。運動は脳の発達を促します。また、持久力と学力は比例し、体幹は集中力や学習意欲に繋がります。
- 体を動かしてよく遊ぶ
- 体幹を鍛える
- バランス感覚を磨く
- たくさん歩く
- 足場の悪い場所を歩く
- リズム遊び
「学力と運動能力には相関がある」という研究は沢山あるので、運動遊びは大切にしたいですね。
また、東京学芸大学名誉教授 杉田隆氏の調査では「決められた運動種目を教わるよりも、自由に遊ぶ方が運動能力は高くなる」という結果が出ています。(日本レクリエーション協会発行:Recrew2013-3月号「遊びでアップ!運動能力」特集 田中教育研究所HPより)
出来る限りお外での自由遊びをさせてあげましょう。
田中教育研究所は、私が心理検査士資格(田中ビネー)を取得し、度々研修に参加している研究所。杉田先生が所長さんなのです。
学力と運動について参考になる記事
運動ができるようになると、アタマもよくなる!? 専門家に聞く!子供の能力を引き出すためのメソッド(スポーツ庁:広報webマガジンより)
運動能力の基礎になるのは体幹です。鍛えると心身ともに好影響…!体幹遊びについてまとめた記事は↓こちら↓

知育
教室では、療育現場でも用いられる知能検査(田中ビネー式)を用いて、一人ひとりの発達状況(IQ)と個性を把握した上で、お子様と知能開発レッスンを行っています。家庭で行いたい2~3歳児の知育は以下のようになります。
言語面・聞く力・話す力
- 絵本を読む
- 童謡を流す・歌う
- 語彙力を高める
- 文の復唱
- 指示行動
- 簡単なクイズ
言語面の知育は、日頃のやりとり(言葉がけと本人のアウトプットの機会)が最も重要です。起きている間はずっと行う事ができます。
知育で何をしようか…と迷った時には「読み聞かせ」が間違いありません。情操教育・言葉の学習・読解力・倫理観等、絵本には沢山の要素が詰まっています。
↓読解力や語彙力を高める読み聞かせ方法について、参考になる本↓

記憶力・思考力・判断力
- パズル
- 絵本(お話の記憶)
- 記憶
- 分類(おままごとやカードで)
- 自分で工夫させる
- ワークで遊ぶ
おままごとは、「野菜サラダ作ろう!これって野菜かな?果物かな?」と分類・上位概念を教える事に繋げられます。お買い物ごっこは「おにぎりとお魚とトマトを買ってきて」と記憶のトレーニングになります。

記憶の取組は、コップ重ねの中に何が隠れていたかを当てるゲームなども喜びます。その他積んだ積み木をハンカチで隠し、同じように積ませる等も記憶力を高められます。
気乗りしない時は、ごっこ遊びに絡めるのも一つ。「アンパンマン!このパズルを完成させましょう!」とメロンパンナの人形を使うとくいつく事も…笑
数概念・図形・空間認知
- 何でも数える
- 数カード
- 百玉そろばん
- 積木
- ブロック
- タングラム
- 図形の玩具
図形は三角形の法則が理解できるような知育玩具から用意してあげるのがおすすめ。タングラムやモザイク積木の他、ピタゴラスやマグフォーマーも、自然と図形で遊べるおすすめ玩具です。
モンテッソーリでは、3~6歳に数の敏感期(何でも数えたくて仕方がない時期)が来ると言われています。ただ、只管それを待つだけではなく、興味が持てるような働きかけは行っておきましょう。
「大好きなおやつ」「積み木」「みかん」など…身近な物や、目に入った物は何でも数えます。
娘が2歳半頃に大ハマりして、あっという間に数概念を獲得するきっかけとなったのは「アンパンマンとはじめよう!色・数・形編」でした。(ただ4=「し」・7=「しち」なのが難点です。「よん」「なな」で教えたいです。)
社会性の向上
- 公園で遊ぶ
- 児童館で遊ぶ
- 初対面の子と遊ぶ
- 順番を待つ
- 玩具を譲る
プレスクールで保育に当たっていて、毎年面白い…と思うのが「コミュニケーション方法は教えれば上達する」「子供同士の関わりの中で言語能力は発達する」という事です。

2歳頃になると…
玩具を取ってしまう子に「貸して」を教えると、「貸して」が言えるようになって来ます。「いいよ」「あとで」等も、ケース毎に教える事で習得し、自分で使えるようになります。
「ちょっと待ってみようか」と仲介も必要ですが、「待つ」経験・「少しの我慢をする力」も大切です。

すぐには上手なやり取りができず、根気が必要な場合もあります。玩具を取って相手の子を泣かせてしまうシーンを見るのは辛いものですが、なるべく同世代の子供達との関わりを持たせてあげましょう。
正直娘も大変でした…。でも経験すればするほど、言葉を使ってコミュニケーションを取る事や、待つ事も上手になりました。
手指の機能向上を促す遊び
手指の機能はそのまま脳機能となります。手先を使える事を狙った知育玩具で遊ぶ方法も一つですが、それだけでは勿体ないので、日常生活で手指を使えるチャンスは逃さずに…!
- 指の分化を進める手遊び
- 紐通し
- 粘土
- 各種ブロック
- ハサミ
- 契り紙
- 工作
- お手伝い
夕飯準備はレタスを千切って貰う、ゆで卵の殻は剥かせる、ピンチハンガーで洗濯物を干す(洗濯ばさみ)等も指先の知育になります。
また、手指の筋力は、後々のお箸や鉛筆(筆圧)にもすごく生きて来ます。沢山動かせるような働きかけを意識してあげましょう。
巧緻性の高さは、「さまざまな学習活動を楽しめるか否か」「繰り返しを要する学習への好き嫌い」へも影響を及ぼすという研究結果もあります。
(参考:J-STAGE|小学生の手指の巧緻性に関する研究: 遊びと学習面からの一考察)
五感への刺激
情操教育と感触遊び
情操教育を大事にしたい月齢です。感受性の高いこの時期に、様々なものに「触れる」「嗅ぐ」「聴く」「見る」「味わう」体験を重ね、たくさん心を動かしてあげたいですね。
- 砂場(砂遊び・泥んこ遊び)
- 粘土遊び
- 水遊び
- 自然や生き物との触れ合い
- 四季を感じる
- 味覚狩り
- 楽器に触れる
- 台所仕事のお手伝い
- 美術館や博物館へ行く
- 山・川・草原・雪の原で全身で遊ぶ
模倣する事で成長する幼児は、「心のありよう」まで大人の模倣をします。「水が冷たくて気持ちいね。」「みんなで食べるとおいしいね。」等、感じた事を言葉に出す事で、子供の心も育てる事が出来ます。
豊かな心を育むと、「これなに?」「どうして?」という知的好奇心を伸ばす事ができます。さらに「分かった!」「おもしろい!」が増えると学ぶ楽しさへ繋げられます。

また、砂・水・粘土等の感触遊びは大脳を働かせる事もできる他、情緒の安定にも繋がる為、成長期で心が不安定になりがちな2~3歳児にぴったりの遊びです。
イヤイヤ期や一次反抗期で扱いが難しい時は、よく川や砂場へ連れて行ったよ。機嫌よく黙々と遊んでくれると親もひと息つけるね。
体験から得る学習
2〜3歳頃は、身近な危険に対して、親が何度も「ダメ!」「危ない!」と注意しても、言う事を聞かない事が多々ありますよね。
何度言っても分からない時は小さな失敗を経験させてあげましょう。自分の感覚で身をもって学習する事で、判断力・理解力を養う事ができます。
娘は、台所で「お鍋にちょっと触ったら熱かった」という経験をして以来、ガスコンロには近寄らなくなりました。
転ばぬ先の杖になるよりも、転んで小怪我をさせるぐらいの方が、自分でしっかり考える子に育ちます。大事に至らない程度に…敢えて失敗させましょう。
環境整備
没頭できる環境作り
モンテッソーリ教育の『やりたい事に夢中になる「集中現象」でさまざまな能力が伸びる』という考え方と、脳科学の『地頭は「熱中体験」によって鍛えられる(茂木健一郎氏)』という考え方には通ずるところがあります。
- 好奇心
- 集中力
- 思考力
- 精神的な自立
- 意欲の向上
子供自らが興味を持って没頭し、試行錯誤できる事環境を整えてあげる事で、上記のような力が育まれます。玩具は子供が手に取りやすい位置に片付けましょう。
環境作りの詳細についてはこちら⇒【2歳3歳】ひとり遊びしない子への働きかけと玩具の選び方

玩具はローテーションするのがおすすめ。今は便利なレンタルサービスもあるので活用するのも一つの手です。私も使ってます。
知育玩具サブスクで最大手なのは「トイサブ!」というサービスです。
月額制で定期的に玩具が届くのでローテーションにもぴったり。
公式HPで詳細を確認する⇒知育おもちゃのレンタル「トイサブ!」
自立を促す環境作り
「生活習慣と躾(自立)」の項目で書いた通り、2歳からは身の回りの事を自分で出来るよう促したい時期です。その為の環境も整備してあげたいですね。
具体的な例としては…
- 玄関に靴置きシールを貼る
- 定位置に玩具を片づける
- 定位置に自分の服がある
- 洗面台に踏み台がある
- 子供サイズの水差しを用意する
洗濯物を自分で片づけられる引き出しを用意したり、お茶が飲みたい時に自分で注げる水差しを(こぼした時用の台拭きも)用意する等。
子供が自分で出来る環境を整える事で、「できる事は自分でやる」習慣が作りやすくなります。
環境整備にはモンテッソーリ教育がとても参考になりますが、親が日頃から「どうすれば我が子が一人で出来るか」を想像する習慣を持ってあげたいです。

おわりに
上記8項目が連動して、願書・行動観察・個別考査・運動考査・面接…全ての対策になってきます。
各園によって傾向はある為、願書や面接について個別具体的な対策は必要です。しかし、各考査や面接を通して「親の教育姿勢を見られる」のはどこの園でも共通です。
人格形成のこの時期、取組む際に気を付けたいのは、お子様へはポジティブな声掛けを行う事。自主性を重んじる事。
自主性を重んじるというのは、「子供のやりたい事だけをやる」のではありません。
- 子供自らやりたくなるような工夫
- 楽しめる声掛けや工夫
- またやりたい!と思える褒め方
を行うという事です。ここが親の受験と言われる側面の一つです。
合格したいあまりに親が必死になって、無理強いしたり、子供の心に負荷をかけるのはよくありません。親子のコミュニケーションを高め、長い目で準備を行いましょう。
幼稚園への合格はゴールではなくあくまでもスタート。お受験園や一貫校の附属幼稚園では、愛がありつつも厳しい指導を受ける事があります。
園生活で困らないように、それ以上に「生きる力」や「学びの土台作り」として、親子で出来る事はやっておきたいですね。

